●野畑 佳香(Yoshika Nobata)さん
大阪府出身。高校卒業後、メルボルンのウィリアム・アングリス・インスティチュート専門学校(TAFE)で学ぶ。卒業後は旅行会社、広告代理店を経て、現在は留学事業に携わる。
自身のオーストラリアの経験と重ねながら、人びとの留学に携わる
―現在のお仕事について教えてください
旅行会社の留学事業部で働いています。
今担当しているのは、大学などで募集している短期プログラムや団体留学です。
具体的には、海外の学校や大学への問い合わせ、見積もり取得、航空券の手配など。
また、保険や不動産も扱っている会社なので、海外保険や滞在先の手配など、留学に必要なものを一貫してカバーできるところが特徴です。
仕事をしていて特に楽しいのは、留学のさまざまな面に携われること、いろんな方の留学に関われることですね。
私自身のオーストラリア留学経験と重なって、気持ちがわかる部分もあり、やりがいを感じます。
TAFEという選択肢を知り、メルボルンへの留学を決意
ー野畑さんのオーストラリア留学のきっかけは?
まず、志望していた大学から合格をもらえず…!
その大学以外に興味を持てなくて「このまま他の大学に入っても…」という気持ちでした。
また、高校では英語科だったものの、英会話に苦手意識があり「使える英語を身につけたい」と思っていました。
とはいえ大学留学は費用もかかりますし、日本の大学から留学する方法もあるので、どうしようかと…
そんなとき高校で、TAFEへ進学した卒業生の先輩から話を聞く機会があり「そんな進路があるんだ!」と興味を持ちました。
何より、英語を勉強するのではなく「英語で何かをできるようになりたい」と考えたときTAFEに魅力を感じました。
ー留学先としてオーストラリアを選んだ理由は?
治安の良さ、時差が少ないこと、アルバイトが可能なことなどからオーストラリアを選びました。
そして、高校のプログラムでメルボルンに行ったことがあり、その後も現地の友だちやホストファミリーとの交流が続いていたため、オーストラリアであればメルボルンが良いと思いました。
ー進学先であるウィリアム・アングリス・インスティチュートは、ホスピタリティに定評のあるTAFEですね
はい。当時は将来やりたいことが明確だったわけではありませんが、専門を決める必要があったので、ホスピタリティやツーリズムに絞りました。
海外や英語を好きになったきっかけのひとつが、小さい頃の海外旅行だったこともあり、旅行業界のことを学んでみようと思ったからです。
ー留学生活について教えてください
まず5ヶ月ほど語学学校へ通い、その後TAFEへ入学しました。
オーストラリアに着いて最初の1週間は、毎日部屋で泣いていましたね…
語学学校は入学のタイミングがバラバラなので、既に留学生活に慣れつつある学生のなかに混ざることになります。
このため、ほかの留学生は授業でもきちんと受け答えできている一方、私は全く英語を聞き取れず…
すんなり溶け込めると思っていた分、ギャップを感じて「この先やっていけるかな」と不安でした。
野畑さんの語学学校体験記はこちら
語学学校を終えるころには「多少慣れてきた」と感じるようになりましたが、TAFEへ入学すると、また留学初期のような壁を感じました。
というのも、TAFEは語学学校とは違い、「英語ができるか」ではなく、英語ができて当たり前の前提で何かを学ぶ場所です。
オーストラリア人のクラスメイトに囲まれて受ける授業は英語のレベルも高く、最初は宿題を出されたことに気づかないこともありました…
ありがたいことに、クラスメイトが声を掛けてくれたおかげで、何とかやっていきました。
ー周りに助けてもらえたのは、野畑さんが現地でうまくコミュニティを築けたからこそだと思います。何か意識したことはありますか?
遊びに誘ってみたり、アクティビティに参加したりして、できるだけ誰かと会うようにしていました。
私自身は自分のことを人見知りだと思っていますが、オーストラリアに来た以上は友達を作ろうと、当時の自分にしては頑張ったと思います…!
ー「できないから」と殻にこもるのではなく、積極的に行動し続けた点が素晴らしいです!
留学業界に興味を抱きながら、新卒では旅行業界へ
―就職活動について教えてください
「日本で、海外と接する仕事をしたい」と考えていました。特に興味を持ったのは留学カウンセラーの仕事です。
きっかけは、私自身のオーストラリア留学の際、オーストラリア留学センターの担当の方にとてもお世話になったこと。
人生を変えるような大きな決断にも親身に寄り添ってくださり、私もそういう人になりたいと思いました。
ただ当時、留学関係の仕事は経験者採用が多かっため、新卒で経験のなかった私は旅行業界にも視野を広げ、旅行会社へ入社しました。
ー当時の仕事内容について教えてください
おもな仕事は、旅行会社への提案ですね。
個人のお客さまから相談を受けた旅行会社が、私たちの会社へ問い合わせます。その内容に応じて、私たちが旅行会社に対して飛行機やホテル、ツアーなどを提案する仕組みです。
希望や予算にあう航空券やレストラン探して予約を代行したり、現地に問い合わせたりすることもありました。
ただ、入社して数ヶ月で新型コロナウイルスの感染(以下、コロナ)が拡大してしまい…
ー旅行業界は大きな打撃を受けたのでは?
はい…キャンセル対応を行なう日々が続き、最終的には会社から、社員を一時解雇する「退職勧奨」があり、退職に至りました。
コロナ禍の就職活動を乗り越え、広告代理店で経験を積む
当時はコロナ真っ只中。旅行や留学関係の仕事は募集自体がなく…別の業界にも目を向けました。
そして転職サイトをみるなかで興味を持ったのが、ある広告代理店でした。
その会社のカジュアル面談に申し込むと、なんといきなり社長が出てきまして…!
ー通常、初期の面談や面接は、人事や現場担当者が行なう会社が多いことを考えると、珍しいですね
はい。まだ応募するかも分からない人に対して社長が向き合ってくれるほど、人のことを考えてくれているように感じ、好印象でした。
また、会社自体は小規模ながら、取引先は大企業も多く、裁量が大きそうな点にも魅力を感じて入社しました。
最初の仕事は、申し込みや契約後にお客さまのサポートを行なうカスタマーサクセス。
最終的にはプレイングマネージャーとして、メンバーをみながら自分の業務を行なう立場を経験しました。
そのほかにも、営業の方の提案資料作成、クリエイティブ制作、イベント運営やSNS運用、経理、採用活動に携わる機会もありました。
ついに、念願の留学に携わる仕事へ
広告代理店の仕事はとても楽しかった一方、頭の片隅では「せっかく留学したのに英語を使う機会もなく、このままでいいのか」という葛藤もありました。
そして、自分のやりたいことを改めて模索した結果、やはり旅行や留学に関わる仕事がしたいと思い、今の会社へ転職しました。
ー念願の留学業界につながりましたね!
はい。今の会社は、実は新卒のときも応募していて、「ここに来る運命だったのかも」と縁を感じます。
ただ、ここまで決してスムーズだったわけではありません。
特に日本ではTAFEの仕組みが伝わりにくいのか、大学卒業資格がないことを理由に面接の序盤で断られてしまったり、そもそも面接に進めなかったりしたこともありました。
そんななか今の会社は学歴不問、むしろ自分で考えて海外へ行った勇気を評価してくださり「そういう人に来てほしい」と言ってくれました。
正直なところ、新卒の就職活動やこれまでの転職活動を含め、学歴の壁を感じた場面は少なくありません。でも、きちんと説明できれば分かってもらえる場所はあると思います。
振り返ると、これまでの経験は全部意味があった
回り回って今に至りますが、これまでの経験は、今の仕事にも活きていると感じます。
たとえば、提案書を作成したときや、広告枠の掲載内容をデザインから考えたとき、社内ですごく褒めていただきました。
「これもできる?」と、いろいろな制作を依頼いただくことが増えていますが、これは前職の経験のおかげです。
これまで「この経験が何につながるんだろう」と不安に感じることはたくさんありました。
でも今振り返ると、あとから意外なところでつながって今に活きていることが多く「これまでの経験は、全部意味があったな」と感じます。
だから「留学したけど想像通りの結果にならなかった」「なりたかった自分と全然違う」と感じている方がいたら、大丈夫だよ!と伝えたいです。
やりたいこととやっていることが、たとえ今は直結していなくても、絶対に何かにつながっていると私は思います。
留学とは、本来の自分を知るきっかけ
ー野畑さんにとって、留学とは?
本来の自分を知るきっかけ、ですかね。
たとえば海外では、すれ違う人に「その服、素敵だね!」と声を掛けたり、誰とでもフランクに話しますよね。
そうした環境に身を置くうちに「私も話しかけてみよう」と思うきっかけになり、人見知りの自分が変わった気がします。
ただこれは「留学して新しい自分になる」というより「本来の自分はこうだったんだ」と気づくような感覚です。
私の場合、年齢とともに人見知りになったものの、もともと小学生の頃は積極的な性格でした。だから本来は、誰に対しても「そのシャツ、素敵やな!」とか言いたいタイプなのだと思います(笑)
どんな状況でも自分で決断し生き抜く力が、今につながった
それから、留学を通して「人と違うことをしてもいいんだ」と気づけたことは大きいです。
私自身、最初に進路を決めるときはすごく悩みました。周りから「日本の大学に行った方が良いんじゃない?」と言われることもありましたし…
留学中、日本の友達が楽しそうにしている様子を見て「日本で大学生になった方が良かったんじゃないか」と思ったこともあります。
でも、納得できる「今」につながったのは、どうしたらいいか自分で考えて決断し続けたからこそ。
今は「人と違うことをして良かった」と心から思いますし、オーストラリア留学を通して、自分で決める決断力も身についたのではないかと思います。
同じく留学経験をもつ友人が「留学で得たものは語学だけではない。それ以上に、どんな状況でも生き抜く力」だと言っていました。本当にその通りだと思います。
これまで頼ってきた家族や周りの人たちがいない、すぐに会える距離でもない。そんな留学生活を通じて「どんな困難もなんとかなる」という自信が生まれました。
だからこそ、これから留学する皆さんにも「なんとかなる」と伝えたいです。きっと怖いと思いますが、意外となんとかなります!
ーこれからやりたいことは?
TAFEや海外の大学への進学のような選択肢もあることをより多くの方に知ってもらい、留学に行く人をもっと増やしていきたい、というのが大きな夢です。
日本ではまだ珍しい選択肢だと思いますが、「珍しい選択をしても、最終的には何かに結びつく」ということを、私の実体験も伝えながら知ってもらい、色んな方の選択肢を広げたり、勇気を与えたりできたらと思います。
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