●土井大輔(Daisuke Doi)さん
埼玉県出身。県内の高校を卒業後、パースでの語学留学を経て、TAFEでITネットワーキング、国際貿易を学ぶ。帰国後はIT系ベンチャー企業へ就職。現在は株式会社DrootsのCEOを務める。

デジタルサイネージビジネスのCEOとして


―現在のお仕事について教えてください
弊社は2019年10月に設立した会社で、デジタルサイネージや付随するクラウド配信システムなどの企画、開発、販売、施工を一気通貫で提供しています。

デジタルサイネージとは電子看板のことで、わかりやすい例を挙げると、駅構内などで液晶広告を見たことがある方が多いのではないでしょうか。

このようにデジタルサイネージは、公共の場所の広告媒体や、イベント・商業施設などの空間演出のために利用されています。

弊社は、デジタルサイネージの中でも近年特に注目を集めている「3Dホログラムディスプレイ」を中心に取り扱っています。これは、LEDが配列されたブレードを高速回転させることにより、残像現象で3D映像を投影する機械で、雑誌やメディアにも取り上げていただきました。

僕自身は、この会社の経営や営業戦略、システム開発など幅広く携わっています。

また、製造工場が中国の深センにあるため、新型コロナウイルス感染拡大前は、仕事で日本と中国を行き来していました。
ー昔から今のようなキャリアをめざしていたのですか?
そうですね。ITシステム関連事業や、海外と日本をつなぐことに関与したいと思い、オーストラリアのTAFEでITと国際貿易を学びました。

これらは今の仕事でも実行できているので、オーストラリア留学での学びは、大きく今につながっているといえるのではないかと思います。

パースへ語学留学→TAFEでITや国際貿易を学ぶ


ーオーストラリア留学のきっかけを教えてください
高校生のとき、卒業後に語学留学をしようと思ったことです。

それまではずっと野球に打ち込んでいましたが、怪我などで辞めることになり、これから何をしようかと考えていて。そのなかで、オーストラリアのパースに親戚がいることを思い出し、留学という選択肢が浮かびました。

その後は、高校卒業までに留学資金を貯めようと、アルバイトなどをしてオーストラリア留学に備えました。

まずは1年間の語学留学だけ、その後の具体的なプランは決めずに渡豪しました。周りに留学の相談をしたときに「最低限の目標を心に決めておいて、達成した時には、新しく見えてくる風景がある」とも言われたので。

日本では、卒業と同時にすべてを決めなければいけないような風潮を感じますが、やりたいことが見えていないのに期限までに決めることは難しいですし、考えすぎなくても良いのではと思います。

ただ、語学留学中に次のステップを考えることは意識していたので、語学留学中の目標を2つ決めて渡豪しました。ひとつは語学の習得、もうひとつは現地でいろんな人に会うことです。人に会い、会話をすることで、新しい何かが見えると思いました。

実際に語学留学中は、積極的にいろんな方と話をするようにしました。セカンドキャリアでオーストラリアに滞在している海外の方、日本人の大学生やワーキングホリデーで来ている方…

出会う場所はバーが多かったですね。日本よりもオープンな雰囲気なので、偶然隣に居合わせた人と乾杯して世間話をするうちに、後日もう一度会う…ということも多々ありました。

こうして現地でいろんな人と話すなかで、TAFE進学をめざすようになりました。
ーTAFE進学を決めた理由を教えてください
もともと大学進学よりも就職を重視していたこともあり、語学学校で英語を学んだあとは、英語で学びスキルを習得したいと思ったからです。

語学学校を修了後は一度日本に帰国し、TAFE進学に向けてIELTSの勉強をしながら、働いてお金を貯めました。六本木でバーテンダーをしていたので、リキュールを作りながら単語帳を開いて勉強したことも良い思い出です(笑)

TAFEでは半年間でIT・ネットワークコース、次の半年間で国際貿易コースを修了しました。当時は資格を得るよりも実をとりたいと考え、必要最低限のコースを選んだ形です。

IT・ネットワークコースでは、ネットワークセキュリティや構築について学びました。

国際貿易コースでは、オーストラリア産の商品と輸出先の国を選び、販売・マーケティング戦略、法律などの規定も含めてプレゼン資料にし、発表しました。使用するコンテナのサイズといった、輸出入に必要な規定なども調べて資料にまとめました。

TAFE卒業後はキャリアを模索しながら、IT系スタートアップへ就職

ーTAFE卒業後の就職活動について教えてください
まずは日本へ帰国し、考える期間を設けました。その間、再び六本木で働いたり、小学生向けの英語教室を開いてみたり…起業にも憧れがあったので、訪日外国人向けのパッケージツアーを考えたこともありました。

半年ほどいろいろなことに取り組むうちに、就職を考えるようになりました。海外での現地採用やスタートアップ、大企業まで、国内外の企業を幅広く検討しながら、海外での留学経験者のみが参加できるフォーラムなどにも参加しました。

そして、Wantedly経由でカジュアルに話を聞きにいった会社へ入社することに。

その会社では、IoT事業、エネルギー関連のビックデータ事業、サイネージ事業を手掛けていて、将来性のあるIT企業だと思いました。また、会社全体を把握したい、会社の拡大を間近でみたいと思っていたので、少人数のスタートアップである点にも魅力を感じました。

僕は営業企画職として、サービスを企業に導入するための営業活動を担当しました。また、商品企画にも携わっていたので、エンジニアと話しながら画面を設計するなどのサービス開発にも関わりました。

めざすはサイネージの風雲児。グローバルも視野に入れ、今の会社を成長させたい

その後、仕事を通してお会いしたパートナーや出資者と新たなデジタルサイネージビジネスを立ち上げることになり、今に至ります。
ーこれからやりたいことは?
ビジネスや世の中への貢献規模を拡大するため、上場を目指し、奮闘中です。

この会社は、システムとハードウェアを両方開発できる点が特長です。つまり、たとえば屋外向け、大型、小型タイプのように、それぞれの市場に応じて商品をつくることができます。これにより、大手企業や上場会社と共同プロジェクトなど、日々新たな開発をしています。

これからもサイネージの風雲児になるべく挑戦していきたいですし、会社が大きくなっても尖ったことに挑戦し続けたいと思います。

また、この会社をハブに、ビジネスを日本から海外へ広げていきたいです。

現在弊社は、マレーシアの日本向け商業施設内のサイネージ担当などのお引き合いをいただいています。海外支店も視野に入れ、グローバルな環境を作っていけたらと思います。サイネージを通して世の中を豊かにし、日本への貢献にもつなげたいと考えています。

人とのつながり、そして目標を持つことを大切に

ー留学を考えている方にアドバイスをお願いします
まずは、人とのつながりを持つことです。僕の場合、オーストラリア留学中に人と会って話をする中で、結果としてTAFE進学を志すことになりました。だから、人とのつながりの中で何かが見えてくると思います。

そして、目標を持つことです。もし目標がなければ、それを見つけるためにやるべき「ToDo」を決めると良いと思います。

僕は、オーストラリア留学当初に掲げた「語学を習得する」「人に会う」という目標を追う過程で、次の目標であるTAFE進学が見えてきました。

「セレンディピティ(偶然の幸運)」というワードがあるように、目標達成時やそれまでの過程の中で、自然と次の何かに出会えると思います。

迷ったときは周りの人に相談しても良いと思いますが、決めたことを実行することはその人にしかできません。僕は常に「決めたことは迷わない」ということを意識して、掲げた目標を達成しようとしています。

留学は、自分を振り返り自分を知る、再スタートの場

ー土井さんにとって留学とは?
自分を振り返り自分を知る場、そして再スタートの場だと思います。

留学によって何もないところへ1人で行き、関係性を築いていく上で、たとえば日々の過ごし方や周囲の人たちとの関わり方など、自分自身の性格が見えてきます。これは自分を見つめ直すことにつながるのではないでしょうか。

また、留学中は自分で何でも決めることができて自由です。だからこそ、新しい自分を構築する機会にもなります。

これらは日本にいながらでも得られる機会かもしれませんが、「それまでの自分の全てを置いて、新しい場所で一から構築する」度合いの強さという点で、やはり留学は大きな経験になると思います。

取材後記

自然体なのに、何かがぶっ飛んでて面白い…!そんな土井さんが、オーストラリア留学中に偶然出会った人たちとあっという間に仲良くなる姿が目に浮かぶようでした。
土井さんはきっとこれからも、走り続けながらいろいろな目標を見つけて、未来に向かっていくのだなぁ…と感じました。

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