●澁谷 航平(Kohei Shibuya)さん
神奈川県出身。立命館アジア太平洋大学在学中、メルボルンへ。経営者へ弟子入りし現地のカフェで営業などを経験。日本へ帰国後、映像制作会社を立ち上げる。
TSUMUGUを経営。映像制作を軸に、お客さまの課題に向き合う
―現在のお仕事について教えてください
映像制作会社「株式会社TSUMUGU」を経営しています。
映像制作といっても、お客さまの課題に応じて提案しているので、提供サービスはさまざまです。
たとえば、SNSやYouTubeの運用やコンテンツ企画、ブランディング。お客さまの会社の社員が映像を制作できるようにするためのコンサルティングを手掛けたこともあります。
目の前のお客さまのためだけに1から提案するので時間も労力もかかりますが「どうすればお客さまの課題を解決できるか」を考えることが楽しいです。
これまで特にやりがいを感じたのは、採用動画を制作させていただいたお客さまから「(納品された)映像を観て、泣いた」と言われたときですね。「この動画に、うちの事業がすべて入っている」と言ってくださって。
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僕の会社で大事にしているのは、人々の想いを形にして可能性を広げることです。想いやストーリーが、目に見える形になって誰かに伝わったとき、その価値が輝くと思います。
これを実現してお客さまに寄与できたと思うと、僕も涙が出てきて、仕事をしていて良かったと感じました。
ありがたいことに、リピートや継続利用をしてくださったり、ほかのお客さまを紹介いただいたりして、経営が成り立っています。
ーお客さま満足度の高さがうかがえます!経営はどのように学びましたか?
オーストラリアのメルボルンで、経営者の方に弟子入りして実学で身に付けました。僕はその方を「師匠」と呼んでいて、師匠に出会えたことが大きなターニングポイントですね。
インバウンドに興味をもち、世界一住みやすい街メルボルンへ
ー師匠に出会う前のことを教えてください
オーストラリアへ行く前は、立命館アジア太平洋大学で観光を学んでいました。海外の方を日本の観光地へ誘致する、いわゆるインバウンドに興味を持っていて。
ーとなると、留学も自然な選択肢になりそうですね
はい。世界一住みやすい街として有名な、オーストラリアのメルボルンに興味があり、大学を休学してオーストラリアへ。
最初は、メルボルンの語学学校に通いながらインターンシップをしていました。
師匠との出会いは、このとき語学学校で「面白い経営者がいる」と紹介していただいたことがきっかけです。
当時「事業を立ち上げて何かを成したい、目立ちたい」という気持ちがあり、ビジネスに憧れを抱いていました。
もともと自分で何かをすることは好きだったかもしれません。小学生の時、カブトムシを売ってお金にしていたこともあります。カブトムシを取りに行き、父を連れてペットショップへ売りに行ったことも。
ー昔からビジネス的な発想が自然に身に付いていたのかもしれないですね…!
ありがとうございます。
紹介してもらった翌日、師匠に会いに行きました。当時の僕は、師匠の言ったことを一語一句メモにとるような小僧で(笑)
ーそんな子が来たら、師匠も可愛がりたくなりますね(笑)
師匠に弟子入り、今につながる学びや経験を得る
師匠と何度か会ううちに「今のインターンシップ先で働くより、この人の下で働きたい」という気持ちが強くなりました。
当時のインターンシップ先は、結婚式などのパーティ用にアルコールを提供する会社。僕は倉庫でお酒を仕分ける担当でしたが、出社しても誰もいない、ということもあるなど、自分の期待と異なっていて…
そこで、インターンシップを辞めて師匠に弟子入りすることを決めました。
ー弟子入りして行なったことは?
師匠が経営しているカフェで営業活動を行ないました。
仕組みはこうです。カフェの店内に、地元のハンドメイド商品の販売スペースがあり、カフェを訪れた人がそれらの商品を購入できるようになっています。
このため、純粋なカフェの売上のほか、ハンドメイドを作る方にスペースを貸すことで収益化しています。
僕の仕事は、このスペースの借り手を探す営業でした。
営業資料の作り方、目標を達成するためのタスクやスケジュールの立て方などから教えてもらいましたね。
与えられた目標は、1ヶ月で10人の借り手を探すこと。
地元のマーケットへ足を運び、ハンドメイド商品を販売している方に、カフェの無料チケットを渡しながら「一度話を聞いてみませんか?無料でコーヒーも飲めるので、ぜひ来てください」と声をかけて。
カフェに訪れてもらったら、店内を案内しながら「こんな人が出展していたり、こんな商品も販売されていたりして、いろんな人とつながることができます。一緒にメルボルンでハンドメイドを広げていけたら良いですよね」と。
こんな風に直接話したり、資料を1日100人に送ったりしながら、3週間で7人の方に興味を持っていただくことができました。
また、これとは別にYouTuberとしても活動しました。オーストラリアへ行く日本人向けに、銀行口座の開設方法などの生活情報を解説するチャンネルです。
当時はメルボルンの街を歩いていると声を掛けられることもあり、ちょっとした有名人気分も味わいました(笑)
これも、始めたきっかけは「やったら面白いんじゃない?」という師匠の一言。
この経験がなければ、今映像の仕事も手掛けていないので、やはり師匠との出会いが今の自分につながっていますね。
最初は撮影もiPhoneで、師匠にフィードバックをもらいながら動画をつくりました。
あとはインターネットで調べたり、他の動画を参考にしたり、仕事を獲ってきて学んだり。
ー仕事を獲ってきて学ぶ…!?
たとえば、はじめてお仕事をいただいたのはオーストラリア留学センターです。社長の衛藤さんにお会いする機会があったとき「うちの会社の動画をつくってよ!」とお話しをいただいて。
実はそのとき、動画用のカメラを使いはじめて1週間くらいしか経っていませんでした(笑)
でも「仕事を獲ってきたので…」と、師匠をはじめいろんな人にアドバイスをもらいながら、初受注動画を制作しました。
本当に、オーストラリアで出会えた人たちにサポートいただいたからこそ、今の自分があります。
オーストラリアで得たものを活かして、日本で挑戦
ーメルボルンで3年半を過ごし、日本へ帰国します
はい。帰国したのは「挑戦したい」という気持ちが強かったからです。
オーストラリアで一歩踏み出して挑戦した経験、いろんな人との出会い。こうしたオーストラリアを通じて得たものを活かして、今度は日本で挑戦したいと思いました。
あとは、日本が大好きなので帰りたかったですし!
ー熱い挑戦の気持ちを携えての帰国ですね。
はい。今の会社では、新規事業もどんどん立ち上げています。
そのひとつである「Explore」は、飲食店のショートムービー制作事業です。インバウンド集客が目的で、外国人向けに日本の飲食店を動画で紹介しています。
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将来的には、飲食店で働く外国人の雇用や、彼らが日本で働くためのビザの手続きなどを含めたサポート事業も視野に入れています。
それを日本の少子高齢化対策につなげるなど、日本社会を良くすることに少しでも寄与できればと思います。
「社会に対して何ができるか」に、映像から取り組みたいです。
ー長期的な構想もあり、順調そうです
いえいえ…まだまだ試行錯誤の日々です。
たとえば社員の教育や育成。経営者として「どうすれば社員が今後いい人生を歩めるか」を考える必要があります。
だからこそ「できないからだめ」ではなく、「どうしたらできるようになってくれるんだろう?」と、自分の伝え方や情報提供の仕方を、相手目線で考えるようにしています。
僕は、社員や家族などの「縁ある人を幸せにしたい」と思っていて。
社員に対しては、本人の自己実現を本気で支援したいです。一方で、仕事や自分に精一杯で周りが見えなくならないよう、家族にも思いやりのある行動を心掛けています。
ちょっとしたことですけどね。たとえば「食器が溜まってるから洗っておこう」とか「お風呂が沸いていたら嬉しいだろうから、沸かしておこう」とか。
オーストラリアのような世界を見て、人生がトータルで豊かになった
ー経営者として邁進しつつ、仕事だけではなくプライベートも含めた心がけが素敵ですね
オーストラリアのような世界を見て文化を体験できたことで、人生がトータルで豊かになったのではないかと感じます。
というのも、オーストラリアは本当に良い環境でした。静かな街並み、スローライフ、優しい人たち…
たとえば、メルボルンのトラム(路面電車)のなかでベビーカーを押す人がいたとき。周りの人が7人掛かりで手伝っていて、助け合いが自然に行なわれる環境を実感しました。
赤ちゃんを背負いながらコーヒーを飲んでいる男性を見たときは、家事や育児に対する男女平等の意識を感じました。
日本で見たことのない光景にびっくりしましたが、もし日本だけに住んでいたら、疑問を持ったり、考えたりしなかったことかもしれません。
女性が家事をすることを当たり前だと思い、「自分が食器を洗う」という発想などもなく、洗ってと言われたら「何で?」とか言っている…そんな僕がいた可能性だってあります。
ー日本から出るからこそ、日本との違いに気付いて新しい価値観を知ったり、日本の「当たり前」を見直したりできますね
はい。それに、今自分がインバウンド向けにいろいろ取り組めているのも、オーストラリアで良い出会いを経験できたからだと思います。
もし悪い人ばかりに出会っていたら「日本に来てほしくないな」と思っていたかもしれないじゃないですか(笑)
ーオーストラリアのいろんな面が、今の澁谷さんにつながっていますね!
アクションした自分を褒めて、次のアクションへの力に
ー留学を考えている方にメッセージをお願いします
英語がわからない、どんな生活が待ち受けているか想像できないなどの怖さもあると思いますが、怖いと思ったら行ったほうがいいと思います。
飛び込んだ先には、自分の分岐点になるチャンスがあるはずです。
怖さが鈍ったら勝ちだと思っていて。アクションを起こせると「あのときできたから」と思えて、次のアクションへの力になります。
だから、アクションを起こした自分を褒めれば、そのあとの人生に生きると思います。
ー自分を褒める…それを聞くとポジティブな気分になってきました!澁谷さんと話しているとポジティブになれます!
ポジティブになりたい人がいれば、僕に連絡をくれれば話しますよ!時間の限りめっちゃ褒める、ポジティブ面談です!笑
取材後記
爽やか、眩しい!自然と応援したくなるような「愛され力」が印象的な澁谷さん。
「一度企業に勤めて学べることもあるのでは、と思ったこともありますが、同時に、飛び込めば助けてくれる人がたくさんいることにも気付きました」と話してくれました。
学校や就職先に限らずさまざまなコミュニティとつながりやすい今、活かし方次第で多様な学びやキャリアの可能性があるなぁと改めて感じました。
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