●望月 彩也子(Ayako Mochizuki)さん
静岡県出身。県内の高校を卒業後、シドニーの語学学校、TAFEを経てサンシャインコースト大学で観光学とイベントマネジメントを学ぶ。日本でホテル勤務やカスタマーサービス職を経て、MSCクルーズの乗船スタッフへ。

世界を旅する、クルーズ船スタッフの仕事


―現在のお仕事について教えてください
ヨーロッパを拠点とするクルーズ会社MSCクルーズの「Shore Excursion Staff」というポジションで働いています。船内で寄港地の観光ツアーを販売する仕事です。

クルーズ旅行ではいろんな場所に寄港します。そのため、移動中の船内で乗客の方々の希望を伺いながら現地のツアーを案内し、寄港地に着いたら誘導案内を行います。

きちんと催行されているか確認するため、販売したツアーに参加できることも。遊びながら仕事をしている感覚で、本当に楽しいです!

クルーズにはさまざまなポジションがありますが、今のポジションが船の中で一番楽しい仕事だと思っていますし、とにかく今の仕事が大好きです!
ーお仕事でいろんな国へ行けるのでは?
はい。私はこれまで、地中海やカリブ海のクルーズを担当しました。

ポジションによって異なりますが、私の場合は5ヶ月で1シーズン。シーズン中は同じルートをまわり、次のシーズンで異なるルートを担当するサイクルです。

船の乗客は約5000人、クルーは約1500人。日本人は乗客で数組程度、クルーに至っては私だけということもあり、インターナショナルな環境です。

オーストラリアのシドニーでTAFEを卒業後、サンシャインコースト大学へ

ー留学のきっかけを教えてください
海外好きの家族の影響もあって、小学校の頃から「外国に住む」と言い続けていたり、映画「タイタニック」を見て主演のレオナルド・ディカプリオに恋したり(笑)、海外に対する憧れがありました。

最初は日本の大学への進学も考えましたが、オープンキャンパスに参加しても何となく魅力を感じなかったことや、英語を学ぶために留学をするのではなく英語で何かを学びたいと思ったことなどから、海外の大学へ進学を決めました。

そこで、オーストラリアのシドニーで語学学校からTAFEへ入学し、観光学を専攻。

この時点では「旅が好きだから観光を勉強しよう」程度の気持ちだったので、まだ今のようなキャリアは想像していませんでした。
ー留学先としてオーストラリアを選んだ決め手は?
実は、高校生のときに5 Seconds of Summerというシドニー出身のバンドにどハマりして…!彼らに会いたくてシドニーにしました(笑)
ー迷いのない決断!留学中、実際に会えたのですか?
それが、会えたんですよ!TAFE在学中、彼らがアメリカからシドニーへ帰国するタイミングがあって。空港まで行きましたし、現地のライブにも行けました!


ー夢を叶えましたね!シドニーのTAFE卒業後はサンシャインコースト大学へ進学します。きっかけを教えてください
大学選びのポイントは、都市から離れた日本人の少ない環境と、カリキュラムでした。

TAFEで勉強する中で、大学では観光学とイベントマネジメントを専攻したいと思うようになって。両方学べる学校を探していたところ見つけたのが、サンシャインコースト大学でした。

この頃から徐々に、将来は観光やイベント関係の仕事に携わりたいと思うようになりました。
ー大学生活はどうでしたか?
めちゃめちゃ勉強しましたね…!仮想のイベントを考えてプレゼンテーションをしたり、サスティナビリティについて学んだり。徹夜で勉強することもあって大変でしたが、先生も親切でしたし、何より勉強が好きなので楽しかったです。

また、当時は都市部に比べると日本人が少なく、現地のオーストラリア人やヨーロッパからの留学生が多くて、国際的な雰囲気でした。

卒業ビザを取得したものの、まもなく日本へ帰国することに

ー就職活動はどのように取り組みましたか?
オーストラリアで働く、ほかの国で働く、日本へ帰国する…いろいろな可能性を考えて、GlassdoorやIndeedなどのサービスを使って海外の求人を探したり、日系企業が集まるシドニーのキャリアフォーラムに参加したりしました。

それから、この頃にはクルーズ船で働くことにも興味を持っていて。TAFEで知り合った友人が、TAFE卒業後にクルーズ船の会社へ就職し世界をまわっているのを見て、楽しそうだなと憧れていました。

いろんな選択肢がありましたが、卒業ビザを取得したため、最終的にはまずオーストラリアに残ることにしました。

オーストラリアでの就職は経験が重視されるので、インターンシップなどの経験が少なかった私にとっては難しい部分もありましたが、アルバイトとして働きました。

ただ、家族の事情により3ヶ月ほどで日本へ帰国することに…

その後、地元のホテルでナイトフロントのアルバイトをしながら、改めて就職活動を始めました。

コロナ難を乗り越え、憧れのクルーズ船スタッフの夢を叶えた

そのなかで軸になってきたのは「やっぱり、クルーズ船で働きたい」という気持ちでした。

ところが、動き始めた矢先に新型コロナウイルス感染(以下、コロナ)が拡大。観光業界の求人が一切なくなってしまい、あのときは「もう一生観光の仕事に就けないかも…」と思いました。

それでも、いつか何かしらクルーズ船の仕事につながりそうな経験を積もうと就職活動を続け、コンタクトレンズ会社のカスタマーサービス職で働くことに。

将来アピール材料になりそうなことは何でも取り組みたかったので、店舗の運営をほぼ1人で任せてくれる部門でいろんなことに挑戦しました。

対面の接客はもちろん、サンシャインコースト大学の授業で学んだマーケティングやPRを自主的に取り入れたり、店舗の内装に手を加えたり。

「お客さんがこうだから、いけると思います!」といった具合に新商品の発注数を考えながら、仕入れなども担当しました。
ー幅広い経験の機会を自らつくったのですね
はい。すべてはクルーズ船で働くためでしたが、それは会社の面接でも伝えて、理解してもらっていました。
ー自分のやりたいことをはっきり伝えた望月さんも、そのうえでいろんなことを任せてくれた会社も素敵ですね!
ありがとうございます。そんなわけで、働きながらあらゆるクルーズ船の会社に履歴書を送り続けました。

履歴書にはこだわりましたね。大学で勉強したことや、ホテルやカスタマーサービス職の職務経験を、いかにクルーズ船の業務に関連付けられるかを考えながら盛り込みました。

さらに履歴書とは別に、プレゼンテーション資料も作成して応募時に添付していました。
ーそして遂に念願叶って、今の会社に入社されたのですね
はい。コロナで気持ちが滅入っていた時期もありましたが、今となっては、逆境があったからこそ今があると思うことができています。

留学で身につけた粘り強さと積極性が、今に活きている


ーオーストラリア留学が活きていると感じることは?
まず、粘り強さでしょうか。たとえば、オーストラリア留学中に現地で有名なチョコレート・カフェでアルバイトをしていたのですが、それは「あのお店で働きたい!」と思い履歴書を送りまくった結果、働けることになりました(笑)
ー留学生がローカルに近いお店で働けるのは珍しいですよね、ガッツの賜物ですね!
はい。経験重視の環境下で未経験でも、とりあえずやってみることを大事にしました。
今のクルーズ船の仕事も、オーストラリアで培った粘り強さがあったからこそ得られたのではないかと思います。

あとは積極性ですね。オーストラリア留学中、積極的に発表したり、先生に質問したりしていました。

卒業後の仕事でも、自分にできることを何でも積極的に取り組んできたと思います。
ー少しでもクルーズ船の仕事につなげようと挑戦し続けた望月さんだからこそ、夢を叶えられたのだなと思います

いろんな夢に向かって、たくさん勉強していきたい

ー望月さんにとって留学とは?
人生の分岐点です。留学によって視野が広がり、何でもできると思えるようになりました。

特に、外国の方は自分のやりたいことをやっていて生きていて、自由だなと感じます。
ーたしかに…!私も卒業直前に「就職先決まってないけど世界一周してくる!」みたいな同級生がいて驚いたなぁ…
そうなんです。彼らを見て「そういう人生があるんだ!」と思ううちに、拓けてきたというか。肩の荷が降りて、自分もやりたいことをやっていいんだ、と思えるようになりました。

だからこそ、これから留学する方は、留学中に積極的にいろんな人と関わることをおすすめしたいです。自分の視野も広がると思いますよ。
ーこれからやりたいことは?
ひとつは英語以外の言語の習得です。同僚にいろんな言葉を話せる人が多く、負い目を感じているので…!

そのほかにも、建物の間取りやアートなどなど…学んでみたいことがたくさんあります。

それから、今の仕事は大好きですが、いつか「クルーズをやりきった」と思ったときにオーストラリアに戻ってみたいです。あとは起業にも興味があります!

いろんな夢があるので、忙しくて1日24時間じゃ足りないです!笑

取材後記

「あれもこれもやってみたい!」オンラインインタビューの画面越しでも楽しむ気持ちがが伝わる望月さんのお話は、聞いているこちらまでわくわくさせてくれました。
どんな環境下でも諦めず、自ら機会をつくって挑戦し、夢を叶えた望月さんのこれからを応援したくなりました。

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