●山下 千遥(Chiharu Yamashita)さん
アデレードへ社会人留学、TAFEと南オーストラリア大学でVFXを学び、卒業後はバイロンベイの制作会社に就職。現地で映像づくりに携わる。

オーストラリアのバイロンベイで、VFXの映像づくりに携わる


―現在のお仕事について教えてください
バイロンベイの映像制作会社で、VFX(Visual Effectsの略。撮影した映像を加工し、現実では目にすることのできない映像をつくる技術)に携わっています。

いろんな作品に関わっている同僚がいるので、何気なく映画を観ていると「それ俺がつくったシーンだよ」と言われたり、「あのドラマのこのシーンをつくったんだけど、どう思う?」という会話になったりすることも。

たとえば、2022年夏に公開された映画「エルヴィス」にも、私が働いている会社が一部関わっていたので「このシーン、あの人がつくってた!」となりながら、みんなで鑑賞しました。

ーつくり手ならではの楽しみ方ですね!山下さんはどんなお仕事をされていますか?
私はNetflixで配信予定の映像作品などに関わっています。この半年ほど、数十秒のシーンをいくつかつくっているのですが、もう少しかかりそうです。


ー手間がかかるのですね…!
はい。ひとつの映像にたくさんの方が関わっています。

たとえば恐竜が走り回る映像をつくる場合は、恐竜の肌をつくる人、動きをつくる人、背景に溶け込むように処理する人…といった具合に作業を分担します。

そのため自分の担当箇所だけを見ると「これで良いの…?」という感じですが、完成した作品を観ると、やはり感動しますね。

色んな人のお陰ですごい映像になるんだな、と実感します。
ーバイロンベイで働く環境はどうですか?
金曜日にビールを飲んだり、昼休みにサーフィンをして「今日の波、良かったよ!」と言っている人がいたり(笑)

英語でのやりとりに苦労することもありますが、「分からない…」と思っていると同僚が察してくれて、5人がかりで説明してくれたりします(笑)


ーアットホームで素敵な会社ですね。もともと今のお仕事をめざしていたのですか?
いえ、オーストラリア留学前は日本で社会人として働いていましたが、今とは全く違う仕事をしていました。

世界で活躍できるスキルを身につけるため社会人留学

ーオーストラリア留学のきっかけを教えてください
海外で働きたいと思ったことです。英語の勉強をはじめた当初、視野が広がるようで楽しいと感じたからかもしれません。

高校時代に海外の大学への進学を考えたこともありましたが、当時は留学に関する情報を十分に得ることができず、ひとまず日本で就職することに。

それでも、3-4年働いてやっぱり海外に行きたかったら留学を考えようと思っていました。
ーその後、社会人留学を決意するのですね。VFXの道を選んだ理由は?
世界のどこでも活躍できる仕事を探すなかで、興味を持った分野がVFXでした。

VFXは海外で活躍している日本人アーティストも多く、海外で就職しやすい仕事ではないかと思いました。

何かをつくることや映画を観ることも好きだったので、これならいけるかもしれない、やってみよう、と。

留学後の仕事を見据えて、英語だけではなくスキル重視の留学をめざしました。
ー留学先はどのように選びましたか?
学費や時差なども含めてVFXを学べる学校を検討するなかで、オーストラリアのTAFEを見つけました。オーストラリア留学センターに相談もしながら、最終的な留学先を決めました。

オーストラリア留学とVFXに関する情報はこちら

TAFEのディプロマからアドバンスディプロマ、そして南オーストラリア大学へ


ーオーストラリアでの留学生活はどうでしたか?
最初の頃は「選択を間違えた」と思いました(笑)

クラスメイトの大半は既に趣味でVFXに触れていて、しかもクラスのなかで留学生は私だけ。技術の面でも語学の面でも「合わない」と感じることがあり、辞めていくクラスメイトもいました。

でも、安くはないお金を払って留学しているので、そう簡単には辞められないしな…という気持ちで(笑)
ー1年後、無事にディプロマを修了してアドバンスディプロマへ進学しますね
はい。最初は1年で帰国する予定でしたが、就職を考えるとディプロマの経験だけでは厳しいと感じるようになったためです。

ところが、アドバンスディプロマ開始のタイミングで新型コロナウイルス感染(以下、コロナ)が拡大。

毎年実施されていたプロジェクトが中止になるなど、カリキュラムが通常とは異なる部分もありました。周りには留学を中止して帰国する日本人も多く、私自身もどうしようか悩みましたが…

帰国するための書類の準備なども大変そうだし、とりあえず残ろう、と(笑)。

山下さんのTAFEでの留学生活に関する詳しい体験談はこちら
ーその後、南オーストラリア大学へ進学しますね
はい。ただ、もともとはアドバンスディプロマの後、進学せずインターンに応募したいと思っていました。

ところが、コロナの影響でインターンの募集自体が中止になってしまって…

そこで学校の先生に相談したところ、勧められたのが南オーストラリア大学のGraduate Certificateでした。

出願期限が迫っていたので、周りに促されるまま大急ぎで履歴書やポートフォリオを準備し、気づけば入学していた感じです(笑)

色んな方が気にしてくださって、サポートしていただいたからこそ進学できたのだと思います。
ー南オーストラリア大学の授業はどうでしたか?
授業のレベルが高く、進むスピードも早いと感じました。月曜日に着手して金曜日に提出する、という風に毎週作品をつくり続けるサイクル。ついていくのがやっとで、授業では5分毎に手を挙げて質問することもありました。

ただ、大変ではありましたが、結果的には進学して良かったです。

VFX未経験からの留学、かつ外国人の私でも、南オーストラリア大学で学んだ経歴に興味を持ってもらえることが多いと感じます。今の会社でも、そのことをきっかけに声をかけてくれる人もいます。

山下さんの南オーストラリア大学での留学生活に関する詳しい体験談はこちら

卒業後は現地就職。さまざまな可能性のあるVFX業界でグローバルに働きたい

ー就職活動について教えてください
オーストラリアを含め海外の映像制作会社に応募しました。南オーストラリア大学を卒業した留学生が働いていたことなども決め手になり、今の会社へ就職しました。

山下さんの就職活動に関する詳しい体験談はこちら
ーこれからやりたいことは?
もちろん映像作品をつくることも好きですが、他分野への可能性も見ていきたいです。

VFXは今、いろいろな領域で活用されつつあります。たとえば、メンタル治療や遺跡の修復イメージ作成、宇宙分野など…
ーさまざまな業界に関わることのできる技術ですね!
はい。知見を広げながら、そういった分野にも携わることができればと思います。

あとは、どの国でも通用する仕事なので、いろんな国で働いてみたいです!

留学は運とタイミング。相手のことを考える想像力が広がった

ー留学が活きていると感じることは?
自分なりに相手のことを考えるようになったと感じます。

日本では基本的に、ほとんどの人と共通の言葉で同じ文化を共有しますが、いろんな人がいるオーストラリアはそうではありません。

だからこそ自分が話す時「相手の文化や性格を尊重しているか」を意識するようになりました。

「自分の気持ちが伝われば良い」というだけではなく「あの人はこう思うかもしれない」と考える想像力が広がったと思います。
ー山下さんにとって留学とは?
運とタイミングじゃないですか?(笑)

私自身、他の人に比べて「オーストラリアが好き!」「絶対オーストラリアに残りたい!」という気持ちがすごく強かったわけではありません。

それでも私が今ここにいるのは、学校の先生方がサポートしてくださって、就労ビザもおりたからこそ。

たまたま、運やタイミングがオーストラリアにあったのかな、と感じています。

取材後記

順調に学位を取得して、計画的な留学!…と思いきや「なんか気付いたらそうなったんですよね(笑)」という自然体が素敵な山下さん。
変化の波に柔軟に身を任せながら、たどり着いた場所でやり切る。その姿勢が今に繋がっているのだなと感じました。これからも、しなやかに世界を飛び回ってほしいです!

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