●豊泉 晧平(Kohei Toyoizumi)さん
日本で働いた後、ワーキングホリデーでオーストラリアへ。マッコーリー大学ディプロマを経て、商学部で応用財務学科を学ぶ。卒業後は金融関連システムの開発・導入を手掛けるコンサルティング会社のコンサルタントとして働く。
コンサルタントとして、企業の会計業務の効率化を支援
―現在のお仕事について教えてください
経営管理システムの自社開発と導入支援を手掛けるコンサルティング会社で、コンサルタントとして働いています。
ここでいう経営管理システムは、具体的には企業の「管理会計」を効率化するための仕組みです。
「管理会計」は会計の種類のひとつで、目標達成度合いなど、社内の意思決定に必要な数字を各企業が独自に資料化しています。
ただ、このための集計作業が非常に大変で…
たとえば拠点が何百もあるような大企業では、各拠点の情報を本社に集めて人力で集計作業をすると、膨大な時間が費やされることも。
そこで私の会社では、企業が管理会計の集計を簡単に行なうためのシステムを提供しています。
システムの見た目は、エクセルそのもの。集計作業は一般的にエクセルを使用することが多いので、慣れ親しんだ使い方ができる仕様を採用しています。
エクセルとの違いは、入力したデータを送信すると自動的に集計される点です。これによって、集計作業にかかる時間を大幅に削減できます。
システム導入がクライアントの業務効率化に繋がり「本当に助かりました」と言われると、特に意義を感じます。
―具体的な業務内容について教えてください
私が携わっているコンサルティング業務では、クライアントへのヒアリングを元に、システムの仕様やデータの管理方法を検討・提案します。
弊社のシステムは決められた機能だけではなく、それぞれの企業ごとに異なる細かい要件に合わせてカスタマイズが可能です。
弊社が開発したものにお客様が合わせるのではなく、弊社がお客様に合わせることを重視しています。
―お仕事の中で大変だと感じることは?
様々な業界のクライアントと対等に話すことが求められるので、スピード感を持って知識をキャッチアップする必要があることでしょうか。
たとえば貿易会社の石炭輸入に関する事業であれば、貿易に関する専門用語はもちろん、石炭をどんな単位でどのように管理しているかなども、システム導入の前提条件として理解する必要があります。
ただ、このようにクライアントの業界や事業の性質を知ることは、大変であると同時に楽しいですね。
製薬会社を例に挙げると、「最初に膨大な研究・開発費がかかるものの、薬の開発後、売上がそれまでのコストを徐々に上回る」という収支の流れが一般的です。そういう特徴が分かると純粋に面白いな、と。
―数字から業界の特徴が見えてくるのですね!数字を読むって、ちょっと難しそうですが…
私はオーストラリアの大学で応用財務を専攻したのですが、そこで数字に強くなれたという部分は、今の仕事にも活きているかもしれません。
管理会計では企業のお金の流れを管理するため、それぞれの会計用語の意味を前提知識として持っていることは、企業の財務活動を理解する上で役立つのではないかと思います。
オーストラリアでのワーキングホリデーから大学留学へ
―留学のきっかけを教えてください
実は、最初から留学するつもりだったわけではありません。はじめはワーキングホリデーでオーストラリアに滞在していました。
ワーキングホリデーに行く前は、スーツ屋の店員として働いていました。
勤務先のお店が閉店することになり今後のことを考えていた時、あるお客様から「英語を勉強しなさい」と言われて。
その言葉きっかけに、とりあえずワーキングホリデーに行くことを決めました。
行き先は、一番早くビザを取得できるという理由でオーストラリアを選択。都市は、有名で名前を聞いたことがあるから、くらいの気持ちでシドニーを選びました。
そしてシドニーの語学学校に通ったのですが、まぁ英語が話せず悔しくて(笑)「もっと英語力を身に着けて、大学に行きたい」と思うようになりました。
そこで、語学学校に1年間通ったあとマッコーリー大学のディプロマへ入学しました。
―マッコーリー大学を選んだ理由は?
シドニーの大学の中で、ディプロマから大学に編入できるカリキュラムがあったことです。
合計3年間で学部を卒業できるので、留学費用を抑えられる点が良いと思いました。
―学部はどのように選びましたか?
オーストラリア留学センターの方と相談して、商学部を選びました。
もともと洋服が好きで、ファッションマーケティングを勉強したいと考えていました。その中でオーストラリア留学センターの方と話し、今後の選択肢を広げる上で商学部が良いのではないかという結論に至りました。
最終的に、商学部の応用財務(アプライド・ファイナンス)学科を修了しました。
ファイナンスを学んで感じた、数字の面白さ
―応用財務を専攻しようと思ったきっかけを教えてください
商学部で勉強する中でファイナンスの授業を取る機会があり、先生の話に魅了されて興味を持ちました。
その先生は「ファイナンスには美的センスを問う要素がある」と言っていましたが、たしかにファイナンスは数字の扱い方が面白いと感じました。
たとえば、数式を用いて企業への投資シミュレーションを行ない結果を予測する際、違う数式を使っても同じ結果が算出されることがあります。このようなパズルのような側面が面白いと思います。
定性よりも定量的な情報を元に答えを導く方が、個人的に好きという点もあるかもしれません。
また、応用財務学科を専攻するためには高い成績を求められたので、挑戦してみたいという気持ちもありました。
―当時、どのようなキャリアプランを描いていましたか?
当初はオーストラリア永住を視野に入れていたこともあり、大学卒業後はそのまま現地で投資銀行や証券会社などに勤めたいと漠然と考えていました。
ただ、最終的には日本への帰国を決めました。
留学することで「やっぱり自分は日本人だな」と感じる中、まずは日本人のビジネスマンとして基礎を身に着けたいと思ったからです。
もし海外で働きたくなったら、日本である程度働いて経験を積んでから挑戦しても遅くないと思いました。
成長できる環境で早く成長したい。興味を持った分野のヒーローを目指して
―就職活動について教えてください
マッコーリー大学を卒業する半年前くらいから、現地で開催される日本人向けの就職フェアなどに足を運びました。
色々な企業に話を聞く中で、様々な事業に携わりたいと感じ、コンサルティング会社や商社を志望するように。
大学の夏季休暇のタイミングで日本へ一時帰国して面接を行ない、今勤めている会社から内定をもらいました。
―入社の決め手は何でしたか?
規模が小さく、裁量を持って働けると感じた点です。
「大企業で安心して働く」というよりも、上流から下流まで関わりながら自分の意見も言いやすい環境で、できることを増やして急いで成長したいと思いました。
そこで、当時30人規模ながら有名なコンサルティング会社出身の方もいて、かつ良いサービスを持っている今の会社へ入社を決めました。
―これからやりたいことを教えてください
金融に特化したコンサルティングに携わりたいです。事業再生にも興味があります。
「ヒーローになりたい」という、小学生男子のような気持ちが心の中にあるのかもしれません(笑)
現実の世界でヒーローになれる瞬間は色々あると思いますが、「自分が興味を持った分野でヒーローになるには?」と考えた時に、事業の復活や成長を支えることではないかと考えています。
留学で磨かれる力は、個の時代に活きる宝物
―留学が今に活きていると感じることはありますか?
今の勤務先の上司からは「自主性」「コミュニケーションを取る姿勢」「責任感」を評価していただくことが多いのですが、これらはオーストラリア留学を通して培った力だと思います。
留学中は、たとえば授業で積極的に意見を述べてコミュニケーションを取らなければ単位を取得できません。そして、意見を言うためには英語力はもちろん、相手に伝わるように話すことが必要です。
このように「能動的に学び行動を変えなければ卒業できない、生きていけない」という環境の中で磨かれた力は、社会人になってからの宝物です。
さらに、「自信を持つこと」もオーストラリア留学で得た大きな学びです。
私はもともと話すことに苦手意識があり、留学当初は下を向いて話すことなどが多かったのですが…
ある時ホームステイ先のホストマザーから「自信を持って話さなければ相手は信用してくれないし、話を聞こうとしてくれない。自信は人として常に持つべき」と言われました。
自信を持つこと、そして自信を支えるために知識や経験を重ねることは、オーストラリアで学んだ一番大事なことです。
これはあくまで私の場合であって、留学を通して得られる経験は人それぞれ違いますが…
人生に大きな影響を与える出来事は、誰しも留学の中で何かしら起きると思います。
そして、試練を乗り越えた先で得られる素晴らしいギフトは、決して無くなるようなものではありません。そのベースを持ちその後の人生を歩んでいけるのは、とても幸せなことだと思います。
これからは「個の時代」、つまり従来「安定した会社」と言われていたような組織に養ってもらうのではなく、個人がインパクトを与えることが求められる時代だと考えます。
そして私は、留学をした方が個の力が磨かれると思います。だからこそ留学で得られる力は、これからの時代において大きな存在感を発揮するのではないでしょうか。
失敗も財産。恐れずチャレンジすることが大切
―これから留学する方にアドバイスをお願いします
留学に少しでも興味を持っているなら、行動は早い方が良いと思います。
まずは話を聞きに行くことや、本気で調べることからはじめてはどうでしょうか。やはり興味があれば本格的に考えれば良いし、そうでなければやめても良い。
また「自分に留学できる?」「就職は大丈夫?」と思う人もいるかもしれませんが、仮に失敗したとしてもその経験が後の財産となり、大きな力になるでしょう。だから、恐れずにチャレンジしてほしいです。
取材後記
おしゃれでスタイリッシュな豊泉さん。まとっているシュッとした雰囲気にはじめは緊張してしまいましたが、周りを気遣ってくださる優しさと、内に秘めた熱い心が印象的なジェントルマンな方でした!
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