●田辺 京子(Kyoko Tanabe)さん
横浜市出身。高校卒業後、メルボルンにあるホルムズグレン・インスティチュートのホテルマネジメントコースに進学し、ラ・トローブ大学ビジネス経営学部ホテルマネジメント・観光コースに編入。卒業後、RMIT大学のTAFE部門 通訳・翻訳コースでディプロマも取得。
その後、英国系出版社、世界的清涼飲料メーカー、米大手スポーツメーカー、ITなど様々な外資企業の秘書として働く。
会社全体を見渡し、企業のダイナミズムを感られる仕事
―まずは、現在のお仕事について教えてください
オーストラリア企業の日本法人であるCoates Japan株式会社で働いています。
Coates Groupは、飲食店などのディスプレイやシステムを手掛ける会社です。例えば、オーストラリアにあるマクドナルドのドライブスルーや、Woolworths(大手スーパーマーケット)のセルフサービス機能にも関わっています。
私は、日本支社長(オーストラリア人)の秘書を務めながら、オフィスマネージャーとして総務や経理、人事などを兼任しています。
―秘書にはどんな業務がありますか?
スケジュール管理や応対業務など、付いている役職者のサポートが中心です。
秘書にはエグゼクティブアシスタント(ビジネス業務に特化した秘書)とパーソナルアシスタント(プライベートのサポートを行う秘書)の2種類があり、役割分担は会社によって様々です。
社長秘書の場合は、各部署のマネジメント層の秘書たちとの連携業務が発生することもあります。
―秘書としてのキャリアについて教えてください
これまで様々な外資系企業で働いてきました。最初はマネージャー付き秘書、そしてその方の昇進とともに社長秘書へ。
その後別の会社に転職し、南アフリカ人のアジア太平洋地域統括(APAC)社長秘書として、18ヵ国の支社をまとめていました。
付く方の役職が上がるにつれて、より重要な情報を管理することになるので、その分責任が増しますね。
―外資系と日系企業の秘書職では、何か違いはありますか?
外資系の場合、外国人マネージャーと日本人部下の通訳や、各国の支社長の秘書との連携業務があります。
また、日系企業では、ビジネスマナーなど形式を重んじる印象がありますね。
一方、外資系では経験を重視される側面が強いように感じます。信頼関係ができると、時には役職者から意見を求められたり、秘書が役職者に提言することも。
立場が上の方ほど分刻みで動いていますし、外資系では特に、その場での素早い判断が求められます。そのため、様々な状況に対応できる経験値が必要です。
―社長秘書のどんなところにやりがいを感じますか?
社長と自分の相性が良いと、会社にポジティブな影響を与えることができ、その結果、会社が大きくなるなど、ビジネスのダイナミズムに間近で関わる点にやりがいを感じます。
ただ、相性の良し悪しがあるとは言っても、秘書は人に合わせる仕事なので、社長のスタイルによって働き方が変わります。そのため、双方のやり方を上手く調整する柔軟性は欠かせません。
それに、自分だけではなく、働く人々の関係性を考えなければ成り立たない難しさもあります。
でも逆に言えば、あらゆる部署や会社全体を見渡すことができる、面白い立場だと思います。
オーストラリアで学び、秘書になった経緯
日本の高校を卒業後、オーストラリア・メルボルンへ
―オーストラリアに留学されたのはどのような理由からでしょうか
高校時代、ニュージーランドに1年間留学しました。高校2年生の後半に帰国すると、周りはほとんど進路が決まっていて。その中で、海外進学という選択肢を持つようになりました。
オーストラリアはニュージーランドと同じ南半球にありますし、中でもメルボルンは自然豊かな学生の街というイメージがありました。
それまでに様々なアルバイトをする中で、自分には接客業が合っているのではという感覚があったので、メルボルンにあるホルムズグレン・インスティチュート(TAFE)で、ホテルマネジメントを学ぶことにしました。自分の興味にもっとも近く、かつ実践的に学べる学校を選びました。
TAFEから大学に編入。アルバイトで英語も上達!
TAFEでホテルマネジメントを勉強する中で、グランドホステスという、グループホテルで働くポジションに興味を持ち始めました。
その後は、将来のキャリアのことも考え、ラ・トローブ大学のビジネス経営学部ホテルマネジメント・観光コースに編入しました。
またTAFEでは、ホテル関係のアルバイト募集の情報を入手できました。
ある日、メルボルンのヒルトンホテルの募集を見かけて応募。「アジア人は雇ったことないけど、やってみる?」と言っていただき、所属部で唯一の日本人として、大学時代はバーテンダーとして働きました。
この経験によって現地のオーストラリア文化を深く知ることができ、英語も上達しました。
またオーストラリアに住みたい!という気持ちが、秘書になるきっかけに
ラ・トローブ大学卒業後、日本に帰国し、ホテル業界も含め就職活動を行いました。でも、オーストラリアにまた住みたいという気持ちがあって。
そこで再びメルボルンに戻り、永住権取得を目指してRMIT大学の通訳・翻訳コースのディプロマを取得しました。
ビザや就労の機会を得ることが厳しい時期だったこともあり、コース修了後は日本に帰国しましたが…そこで就職エージェントの方から勧められたのが、マネージャーの秘書職でした。
外資系企業の秘書業務では、文部科学省に向けた翻訳などもあり、通訳や翻訳はできて当たり前。通訳・翻訳コースで学んだからこそ今のキャリアがあるので、永住権に挑戦して良かったと思っています。
世界を変える会社、ビジョンを持つ社長をサポートしたい
秘書として経験を積んだ現在は、LinkedInなどの媒体を介してたまに企業から直接声が掛かることもあります。
―田辺さんが会社を選ぶ決め手は何ですか?
まずは、自分・社長・会社の関係性を見極めること。
社長秘書は、社長と二人三脚、信頼関係が全てですから、自分と社長の相性は重要な要素です。
さらに、社長と会社の相性も重要。社長が会社の期待に応えられるかどうかによって、会社の行く末が変わりますから。
そして、社風に合うかなど、自分と会社の関係も大切ですね。
また、企業や社長が持つミッション・ビジョンも重視しています。
世界を変えたいというビジョンを持ち、世の中にとって良いものやサービスを提供している会社、その実現のためにリーダーシップを発揮できる社長の下で、自分も成長しながら働いていきたいです。
留学とは、キャリアや人生において、自分が何者であるかを知ること
―田辺さんにとって、留学とは?
キャリアとしても、人間としても視野を広げ、自分のコアを作るもの。まさに「自分が何者であるか」そのものだと思います。
私自身、留学していなければ今のキャリアは無かったので、若いうちにどんどん留学に挑戦し、行動して欲しいです。
―留学の成功の秘訣を教えてください!
留学中のモットーは、「よく学び、よく遊ぶ」。
留学時代の私は、9時から5時まで授業を受けた後、図書館で勉強し、その後、趣味のバンド活動をしていました。
成績を維持しながらアルバイトもして、稼いだお金は趣味に使い…メリハリのある生活を大事にしていました。
今も「よく働き、よく遊ぶ」を実践しています。
社長秘書の中ではかなり珍しいと思いますが、私は、基本的に定時までに仕事を終わらせて帰ります。次の日のエネルギーのために、やはりメリハリは大切です!
取材後記
プロフェッショナルな田辺さんのように、私も軸のあるキャリアを確立していきたいなと思いました。
ちなみに、フレンドリーで親しみやすい田辺さんは、オーストラリア人から「オーストラリアのどこ出身?」と聞かれることもあるそうです!
たしかに田辺さんとお話していると、私自身、自分がオーストラリアにいるのではないかと錯覚してしまうほど…!とても楽しく懐かしい気持ちになりました。
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