●伊佐間 梨華(Rica Isama)さん
茨城県出身。県内の中高一貫校を卒業後、ブリスベンのクイーンズランド大学ファウンデーションコースに入学、国際関係学部卒業。
帰国後、人材系メガベンチャーの内定辞退を経て、大手英会話学校の英語学習カウンセラーやフリーランスのアドバイザーに。2度目の渡豪で英語教授法を修了。
現在は「本当にやりたいことをみつける」ためのプログラム/コミュニティで、メンターとして、ワークショップのファシリテーションや、参加者へのコーチング、コミュニティ運営などを担当している。

ワークショップやメンタリングで、若者たちを包括的にサポート

―現在のお仕事について教えてください
自分のやりたいことを見つけて走り出すための、大学生や若手の社会人向けプログラムに携わっています。このプログラムは、やりたいことの見つけ方や言語化の方法、コミュニケーションの取り方、人の巻き込み方など様々なワークショップに参加できるほか、受講者同士で交流できるコミュニティとしても機能し、自己探求を包括的にサポートします。

私はこのプログラムで、ファシリテーターやメンターを務めています。新型コロナウイルス感染拡大によって、自分を見つめ直したいという人や、休校で行き場のなくなってしまった学生も増え、朝から晩まで人と話したり、ワークショップを行なったりしています。

他にも、学習塾とのコラボレーションや、海外への進学を考えている学生を対応することもありますね。
―今のキャリアを志したきっかけは?
もともと「人の役に立ちたい」という気持ちがあったので、今に通じるかもしれません。幼い頃は「国連職員になりたい」と思っていました。

きっかけは、母が参加していたJICAのプログラム。発展途上国に物品を寄贈すると現地からお礼の手紙が届くのですが、その経験を通して「自分が使ったものが、世界の誰かの役に立つんだ」と思う中で、国際協力に関心を持つようになりました。

国連職員の夢に向かって、クイーンズランド大学へ留学

―大学留学のきっかけを教えてください
将来を考えた時、英語圏の大学に留学して、国際関係学を勉強しながら第二外国語を学べば効率的だと思ったからです。国連職員になるためには、専門学位と、国連の公用語のうち2か国語の習得が必要なので。

利用したエージェントからの勧めで、クイーンズランド大学への留学を決めました。
―留学生活はどうでしたか?
甘く見ていました(笑)

留学したらすぐ英語が話せるようになると思っていたのに、全然で…留学してから3~4カ月が経った頃、「全然喋れるようになりません(涙)」と、高校の英語の先生に連絡をしたこともあります。すると「そんなにすぐに英語が喋れるようになったら誰も苦労しない。みんな泥臭くやっているのよ!」と、喝を入れられて(笑)

先生の言葉を聞いて「留学している事実はあっても、その環境をどうするかは自分次第だ」と思いました。そこで、毎朝ホストファザーと同じバスに乗り会話の機会を作ったり、オンライン英会話を始めて、その日使った英語のフレーズについて質問したりするようになりました。

念願の国際関係学部に進学も…休学し、自分の軸を模索


―クイーンズランド大学の国際関係学部はどうでしたか?
学ぶ内容も求められる英語も、レベルが高く大変でした。ネイティブスピーカーに囲まれて、政治の新しい概念などを学ぶとなると、授業についていくだけでいっぱいいっぱい。本当は、国際関係の課外活動などに参加したかったのですが、余裕がなくて手が回らず、もどかしく感じていました。

そこで、1年間休学することに。日本に帰国し、NPO法人でのインターンシップなどに挑戦しました。

特に印象に残っているのは、難民支援活動を行う学生団体で開催したイベントです。世界難民の日に合わせて、難民の人たちが作った各国の料理を楽しめるビュッフェパーティを企画しました。企画書の作成から場所借りの交渉まで奔走し、当日は200人ほど集めて成功を収めることができました。

休学中の活動を通して、将来を考える上で自分の軸が見えてきました。

まずは、「現場で働きたい」ということ。例えば、同じ国際協力という括りでも、仕組みを作る側と現場に出る側など、色々な立ち位置があります。休学中に様々な国際協力の活動に関わったことで、自分が好きな関わり方が分かってきました。

また、休学前は漠然と「誰かの役に立ちたい」と思っていましたが、より具体的に「人の夢や目標を応援したい」「人の成長に関わるきっかけを作りたい」と思うようになりました。

自分の目指したい方向が定まってくると、自信を持てるようになり、心に余裕が生まれました。以前よりも気負わなくなったことで、英語も話せるようになり、復学後の留学生活を楽しむことができました。


―就職活動について教えてください
卒業後、日本のエージェントを利用して就職活動を行いました。就職先は、人材・教育業界に絞って探しました。
―国際協力とは違う業界を選んだのですね
理由は2つあります。まず、普通の企業で働いてみようと思ったこと。休学中に非営利組織に携わる中で、寄付金に頼ることによる資金不足の課題を感じました。そこで、お金を作る側を見てみたいという気持ちが芽生えました。

そして「自分が国際協力のプロになりたいのか」という点に疑問を抱いたからです。プロとして働くためには、支援を必要としている人に対して、時には毅然と振舞う必要があることを、休学中の活動で感じました。その中で、私自身は、プロとして国際協力に携わるよりは、仕事以外の形で関わっていきたいと思うようになりました。

人材・教育分野であれば、メンタルとスキルの両面で目の前の人をサポートでき、「現場で人の成長に携わる」という自分の軸にも合っているのではないかと考えました。

最終的には人材系メガベンチャーから内定をいただき、入社を前提として、内定先でアルバイトを始めました。
―内定から入社までの間に働くとは、意欲的です!

内定先でのアルバイトが、キャリア見直しのきっかけに

アルバイトを始めた理由は、「入社後の研修の順位によって、配属の希望の通りやすさが変わる」と言われていたからです。私はどうしてもキャリアアドバイザーになりたかったので、入社前に力をつけて、希望の部署で働けるようにしたいと思いました。

ところが、いざ働いてみると、体調を崩しながら働き続けている人や、土日を犠牲にしている人もいて…のんびりしたオーストラリアのライフスタイルが恋しくなっていたこともあり、オーストラリアに帰りたいという気持ちが強くなりました。
―帰国直後は特に、オーストラリアと日本のギャップを強く感じますよね…
そこで、内定を辞退してオーストラリアの大学院に出願しました。合否の結果が出るまで半年ほど日本で働き、お金を貯めてオーストラリアに戻ろうと思いました。

気付けばトップカウンセラー!様々な偶然が繋がって、楽しい仕事が見つかった

ある日、オンライン英会話のレッスンを受けた時のことです。留学当初に始めて以来、ずっと続けていたのですが、その日はたまたま代行の先生のレッスンでした。

そこで自分がやりたいことを話すと、先生から「うちの会社を受けてみれば?」と勧められました。面接を受けて「ぜひ来てください」と言っていただき、英語学習カウンセラーとして働くことになりました。

業務内容は、体験レッスン後のカウンセリング実施と、それぞれの人に合う教材や学習方法の提案です。現場で人をサポートするという、まさに希望していた仕事に携わることができ、楽しくて夢中で働くうちに、なんと全カウンセラーの中でトップの入会率を記録していました。

さらに、カウンセラーとは別の繋がりで、英語コースの整備やレッスンにも関わることに。以前、学生が社会人に話を聞くOG・OB訪問アプリで知り合った方がいて、久しぶりにお会いする機会がありました。仕事の話をすると、たまたまその方がビジネス英語のレッスンを手掛けていて、日常会話コースの立ち上げに誘ってくださいました。ゼロから作ることで、既存のサービスにとらわれず、目の前の人の悩みに応えられる提案ができました。

オーストラリアに戻る予定でしたが、こんな風に思いがけず色々なお仕事の機会をいただき、気付けば日本で楽しく働いていました。

後悔しないように、再びオーストラリアへ

そんな中、出願していたオーストラリアの大学院から合格通知が届きました。

このまま日本で働き続けても良いかもしれないと思い始めていたので、進学はかなり迷いましたが…行かずに後悔することがないよう、クイーンズランド工科大学院の社会福祉修士課程に入学しました。

仕事でメンタルに関する相談を受けていたこともあり、そうしたケアのノウハウを学びたいという思いもありました。

ただ、仕事をしていた時の方が刺激が多かったように感じ、大学院は中退することに。代わりに、もともと興味のあったTESOLのディプロマを取得し、その後今の仕事に出会いました。

参加する側から、支える側に。対等な立場で寄り添っていきたい

オーストラリアからの帰国後は「人の夢をサポートする」という軸をどのように実現すれば良いかを考えていました。

その中で見つけたのが、今関わっているプログラム。参加者として勝手に運営を手伝っている間に、リーダーから一緒にやらないかと声を掛けていただき、今に至ります。

メンターという立場ではありますが、「支援する」「教える」というよりも、対等な立場で目の前の人に寄り添い、その人にとって最適なサポート方法を見極めていきたいです。

自分の軸を持つこと、そのために行動することが大切

―留学において大切だと思うことは何ですか?
英語の勉強はもちろん大事ですが、語学力以上に必要なのは、自分の軸。やりたいことをやって自分の考えを持ち、中身のある話ができることが大切です。

「そうは言っても、自分のやりたいことが分からない」という人もいるかもしれませんが、そういう場合は行動あるのみ。やりたいことは、突然降ってくるものではなく、やってみて初めて分かるものだと思います。アルバイトでもサークルでも、とにかく挑戦してみて、続けたいと思ったことを磨いていけば良いのではないでしょうか。

取材後記

自分の気持ちに正直に、そして持ち前の行動力で突き進みながら、休学や内定辞退など波乱万丈な留学~キャリアを経て、希望の仕事にたどり着いた伊佐間さん。
様々な経験をしている伊佐間さんであれば、多くの人の「やりたい」という気持ちに寄り添い、伴走してくれることでしょう。

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