●島田 珠衣 (Tamai Shimada)さん
北海道出身。中国でインターナショナルスクールを卒業後、グリフィス大学ディプロマからイベントマネジメントを学ぶ。卒業後はゴールドコースト、バリ島、東京、大阪などでホテル営業経験を積み、現在はコンラッド・センテレ二アル・シンガポールでMICE・レジャー・法人の営業部長を務める。

お客さまのニーズを追求する、ホテルの営業

―現在のお仕事について教えてください
シンガポールにあるホテル「コンラッド・センテレ二アル・シンガポール」で営業部長を務めています。

ホテルの営業とは、客室やレストラン、宴会場など、ホテルに関するいろいろなサービスを販売する仕事です。

お客さまは、旅行会社やイベント会社、法人企業などさまざま。ホテルを利用する方のニーズに合わせてご提案を考えます。
ー仕事をするうえで心掛けていることは?
ホテルを利用するお客さまにご満足いただくことです。そうすることで、ホテルのある都市や国そのものを好きになってもらいたいと思います。

もともと私がホスピタリティに興味を持ったきっかけは、中国人の友達から「日本に対して良い感情は持っていなかったけど、珠衣に出会って世界観が変わった」と言ってもらったことです。

私は幼少期をアメリカで過ごし、その後は日本と中国を行き来しながら中国のインターナショナルスクールを卒業しました。

さまざまな国での経験から、グローバルで力になりたいと考えていました。

そのなかで友人の言葉を受けて「ホスピタリティは、人種や国籍を超えて人の心にポジティブな影響を与えることができるのではないか」と感じたのです。

このときの気持ちを、今も働くうえで大切にしています。

中国から、オーストラリアの大学へ留学

ーオーストラリア留学のきっかけを教えてください
最初は中国の大学でホスピタリティを学んでいましたが、もっと幅広い価値観に触れたいという気持ちから、海外の大学への進学を考えるようになりました。

そして、調べるなかで見つけたのが、オーストラリアのグリフィス大学でした。

他の国も検討しましたが、気候、学費、学生ビザで働ける点などさまざまな点でオーストラリアに魅力を感じました。
ーグリフィス大学での専攻について教えてください
もともとイベントが好きで運営の仕事に興味があり、イベントマネジメントを専攻しました。

ちなみに、グリフィス大学のあるクイーンズランド州は、州として文化・芸術・スポーツ関連のイベントに力を入れています。

そのため留学中は、近郊で開催されるイベント関連の求人に応募し、運営スタッフやイベントブースのバーテンダーなどのアルバイトを経験しました。
ー島田さんは海外経験が豊富なので、大学留学もスムーズだったのではないかと思います
いえいえ…たとえばエッセイの書き方など、欧米の大学で求められるノウハウがわからず、最初は不安でした。

でも、語学学校やディプロマから学部へ編入、と段階を踏むことができ、徐々に慣れていくことができました。

オーストラリアの大学は、自分の状況に応じてさまざまな留学ステップの選択肢がある点が良いですね。右も左も分からなかった20歳前後の私のような、若者に対して優しいなと感じました。

休学を経て、明確なキャリアの目標を設定


ー学生時代はどのようなキャリアを描いていましたか?
大学2年生が終わる時点では、明確な目標が見えていませんでした。

そこで、やりたいことをはっきりさせてから最終学年を迎えようと、大学3年生になる前に1年間休学をすることに。

その休学中の就業経験を通して「ヒルトンホテルで働きたい」と思うようになりました。
ー休学中の経験を通して目標が明確になったのですね
はい。休学中にホテルでの仕事を探していたところ、派遣会社を通じてたまたま働くことになったのがヒルトンニセコビレッジでした。

そこでいろんな方に出会い、話を聞くなかで「この会社で挑戦してみたい」「ヒルトン東京で営業職につきたい」という目標ができました。


ーヒルトン東京や営業職に興味を持った理由は?
ヒルトンはトレーニングが充実していて、やりたいことを明確にして声を上げれば、機会を与えてくれる環境だと思いました。

たとえば、私はパブリックスピーキングに苦手意識を持っていたのですが、そのことを上司に相談したところ、研修を受けさせてくれたこともありました。

また、ニセコではヒルトン東京出身の方と一緒にお仕事をする機会もあり、そのときの皆さんの輝きが印象的でした。

営業職に興味を持ったのは、会社の運営を見渡しビジネスの動きを感じられる部署だと思ったからです。

グリフィス大学では、法律や会計学などさまざまなことを学びましたが、営業の仕事ではそれらのすべてのスキルを活かせるのではないかと感じました。
ーグリフィス大学卒業後は、ゴールドコーストにあるヒルトンサーファーズパラダイスで働かれます
はい。ニセコでヒルトンサーファーパラダイスのことを聞き、復学するタイミングから応募しました。

ただ、その時は受からなかったのですが…なんとその後、シェアハウスで一緒に住むことになった人がヒルトンサーファーズパラダイスで働いていて、紹介してもらうことに。

ニセコでお世話になった方に推薦状も書いていただき、フロントとして働けることになりました。

本当にまわりの方に恵まれていたと思います。
ー休学中の経験や偶然がキャリアにつながったのですね!
はい。ただ、本当はオーストラリアに残りたかったのですが、残念ながらビザが通らず、1年で日本に帰国しました。

周りにはビザが通った方もいたので、何かが欠けていたのかもしれません。

エージェントなどを通さずに自分で申請しましたが、もしもう少し周りに相談していれば、違う経験を積めたかもしれないですね。

バリ島のリゾートホテルで営業経験を積む

「次の仕事ではホテル営業の基礎を学びたい」と思っていたところ見つけたのが、バリ島のリゾートホテルの求人でした。

そのホテルでは、営業の基本をゼロから学ばせてもらいましたね。

ホテル営業は通常、イベント担当、法人担当のように、お客さまのタイプごとに担当が決まることが多いですが、バリ島のホテルでは国ごとに担当が割り振られました。

そのため私は日本、中国、韓国、アメリカなどを担当し、各国のさまざまなお客さまを対応しました。

国ごとにお客さまの特徴が異なるので、いかに特色を活かして販売するかを考えることが必要になります。

たとえば、アメリカからバリ島を訪れるお客さまは、アジアのお客さまよりも、周辺の国や都市を複数回るパターンが多かったです。

そこで、他の地域からバリ島へ寄ってもらうために何ができるかを考えてご提案するなど…とても勉強になる経験でした。

夢を叶え、次のステップでシンガポールへ

「ヒルトン東京で営業職につく」という目標を持った時から「いかに雇われる人材になるか」を意識していました。

募集要項を見て必要なスキルを確認し、積むべき経験を逆算して、仕事をしながら「ここはできるようになった」と振り返って…

そんななか、たまたまヘッドハンターから声をかけていただき、ヒルトン東京で営業として働くことになりました。法人営業を中心に、さまざまな経験を積むことができました。
ー夢がそのまま叶いましたね!
はい。その一方で、目標を達成したことで「これからどうしよう」という気持ちにもなりました。

そこで浮かんだ次の目標が、シンガポールでした。

シンガポールには、アジア太平洋地域の中心として多くの企業が集まるため、会議やイベントも盛んで興味を持ちました。

ただ、経験が浅いと職種が限られてしまう傾向があります。そこで、まずは日本で経験を積み仕事の幅を広げようと思いました。
ーその後ヒルトン東京、ヒルトン大阪の営業職でステップアップされ、今のシンガポールでのお仕事につながりますね
はい。まずは今の環境に慣れていきたいですが、目標は常にいくつかあります。それらを叶えるために何をするべきか、これからも意識していきたいです。

留学中に多様な世界観に触れることが、社会に出て活きる

ーオーストラリア留学が活きていると感じることは?
オーストラリアは国自体がダイナミックなので、多様な世界観に触れることができネットワークが広がりました。

世界各国から留学生が集まっていて、私自身、グリフィス大学でさまざまな国籍の人に出会いました。

みなさんにも、留学中は居心地のいい仲間と一緒にいるだけではなく、いろんな人に出会ってほしいです。

時には大変なこともあるかもしれませんが、「こういう人もいるんだな」と知ることも経験のひとつになるでしょう。

自分の「コンフォートゾーン」から離れることで、新たな世界観に触れ、自分の再発見にもつながると思います。

社会は異なる世界観を持つ人たちの集まりで、その人たちとどうやって協調しながら仕事をするかを考えることが大切です。

留学は、そのための経験を積むことができる場であり、自分の新たなポテンシャルを発見できる機会だと思います。

取材後記

目標に向かって着実にキャリアを積まれ、夢を叶えられてきた島田さん。
プロフェッショナルなキャリアはこんな風に築かれていくのだなぁ…ととても勉強になりました。

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