●乃木 信(Makoto Nogi)さん
神奈川県出身。玉川大学リベラルアーツ学部を中退し、ディーキン大学ディプロマを経てビジネス学部卒業。現在はFlywire Japanに所属しながら、シンガポール法人管轄のAPAC(アジア太平洋)チームにて唯一の日本担当として働く。

グローバル決済サービスを広めるため、日本の観光市場を1人で開拓


―現在のお仕事について教えてください
グローバル決済代行サービスを提供する外資系企業Flywireで働いています。

通常、海外送金時は、違う国の銀行間で送金が行われ、為替手数料や処理手数料が発生します。この時送金側と受け取り側、両者に費用が発生します。

ところが受け取り先の企業がFlywireを導入していると、Flywire内で決済が完結するので、両者の費用を格段に抑えられます。

例えば海外から日本に送金する場合、送金者の支払いを現地のFlywireが受け取り、日本のFlywireが企業に送金する仕組みです。当サービスは為替によって利益を得るので、受け取る企業から手数料をいただく必要がありません。

ちなみに、銀行送金とクレジットカード決済どちらにも対応しています。

この会社はもともと、CEO自身が海外留学中、学費の支払いで不便を感じたことをきっかけに創業されました。

そのため教育機関での導入が特に進んでいて、僕の母校であるディーキン大学も、僕が卒業した後にFlywireを導入しました。
―私も留学中、日本からオーストラリアへの送金で家族に手間をかけていました…留学生にとってFlywireは嬉しいサービスだと思います!乃木さんの業務内容について教えてください

僕は、日本の観光業界でのFlywire導入に向けて、クライアントの新規開拓やサポート、マーケティングなどを担当しています。

観光分野では日本の担当者が僕だけなので、営業としての契約獲得はもちろん、導入後にサービスを使っていただくための関係維持やトラブル対応、キャンペーン施策の企画・実施なども担当しています。
―1人で日本市場の対応を全て行なっているのですね
はい。日本法人に在籍はしていますが、実は観光業界の部署のメンバーは、僕以外シンガポールやアメリカにいます。

Flywireでは、日本法人を含めたアジア太平洋地域を、シンガポール法人が統括しています。そして、観光領域は日本に進出したばかりということもあり、拠点の中心がシンガポールにあります。

そのため、仕事では基本的にシンガポールチームとコミュニケーションを取ったり、本社アメリカのミーティングに参加したり…

クライアントには日本在住の外国人の方もいるので、英語でのやり取りも多いです。北海道のニセコなど、インバウンド需要の高い地域で経営をしている外国人オーナーの方に向けて、セミナーなども開催します。

こんな風に海外と関わる機会が多いので、日本で働いていますが、気持ちは海外にいるような感覚です!

読み間違えて、交換留学に失敗!?やりたいことを見つめ直し、ディーキン大学に留学

―留学のきっかけを教えてください
大学1年生の時、ニュージーランドに留学していた兄を訪ねたことです。兄を見て純粋に楽しそうだと思い、留学を意識するようになりました。

ただ、最初は通っていた日本の大学から交換留学をするつもりでした。

提携先を調べて、留学期間やカリキュラムの関係でイギリスの大学に出願することに。

ところが、なんと「違うIELTS」を受験してしまい、出願資格がなくなってしまいました。
―「違うIELTS」とは…!?
IELTSには、日本英語検定協会が実施する「通常のIELTS」と、ブリティッシュカウンシルが実施する「IELTS for UKVI」の2種類があります(2020年12月時点)。出願に必要なのは後者でしたが、僕は前者を受けてしまいました。

厳密に言うと、出願資格に「IELTS for UKVI」と書かれていた部分を「IELTS ‘or’ UKVI」と読み間違えまして…

当時IELTSについて詳しく知らなかった僕は「IELTSという試験とUKVIという試験があって、好きな方を受験すれば良い」と勘違いして、通常のIELTSを受けました…
―今となっては笑い話ですが、当時は絶望ですよね(笑)
はい(笑)大学3年時の交換留学のチャンスを逃してしまい、改めて自分のやりたいことを見つめ直しました。

そこで強く意識するようになったのは、もともと興味を持っていた「サッカークラブの経営」という夢です。

昔からスポーツが好きなのですが、その中でサッカークラブの経営者は、チームメンバーや拠点の地域と関わる機会も多く、仕事としても面白そうだと感じていました。

そして海外のクラブも視野に入れる中で、やはり留学したい、と。そこで、日本の大学を中退して正規留学を目指すことにしました。

―交換留学ができなかったことが、結果的に正規留学に繋がったのですね。留学先としてディーキン大学を選んだ理由は?
まず、3年間で卒業可能であることから、費用の面でもオーストラリアやニュージーランドの大学が良いと思いました。

その中で、新しい大学かつ実践的なカリキュラムながら、他の大学と比べて比較的授業料がリーズナブルだったディーキン大学を選びました。

その後、ディーキン大学を取り扱っている留学エージェントを探して準備を進めました。その時にオーストラリア留学センターを見つけて、ディプロマなどの具体的な留学方法なども教えていただき、ディプロマ経由で学部に入学しました。

―専攻について教えてください
ビジネスマネジメントを専攻しました。サッカークラブのオーナーは、キャリアの中で一貫してサッカーやスポーツに携わっているというよりも、他業種の経営者が多いです。

最初からスポーツの業界にいるだけでは分からないこともあるのではと思い、まずは経営そのものを勉強したいと思いました。

現地インターンで経験を積み、最後は好成績で卒業!


―留学中に印象に残っていることは?
インターンシップでしょうか。当初はオーストラリアでの就職を希望していたこともあり、卒業までに経験を積むため、留学2年目からいくつかのインターンに関わりました。

主にディーキン大学の学生向けサイトを利用して、色々な求人に応募しましたね。

現地NPOのイベント関連インターンでは、地域のお祭りで、予算に応じた屋台の出展数や場所の調整、全体の収益管理などを担当しました。

この経験は、イベントマネジメント業務そのものはもちろん、ビジネスの基礎や語学の面で「できない」ことを知る機会になりました。

例えば、ビジネスツールの使い方やビジネス英語。友達とは英語で問題なく会話できていたものの、ミーティングやクライアントへのメールで使う英語は全く違い、最初は苦戦しました。

ただ、在学中最後のインターンでビジネス提案をした時は、ビジネス視点や英語において、自分で「意外とできるようになったな」と感じることができました。

このインターンは、ディーキン大学のカリキュラムの一環でした。実在するクライアント(ビーチの維持管理をするメルボルンのNPO)の増収施策を考える課題で、良い提案は実際に採用されることもあります。

僕はチームのリーダーとして、クライアントへのヒアリングやプレゼンテーションを行いました。
―どのような提案をしましたか?
注目したのは、ビーチの冬の集客です。他のグループは夏の施策を提案していましたが、夏はビーチに人が集まるので、そもそも収益が見込めます。そこで僕たちは、冬の集客で収益の底上げを図る施策を考えました。

いくつか提案した施策のうち、1つはグラフィティアート。メルボルンにはアーティストがたくさんいて、グラフィティアートを街中で見かけることもあったので、地元らしさを活かしたいと思いました。

それから「NIGHT WAVE-光の波プロジェクト-」からもヒントを得ました。僕の地元エリアの逗子で開催された時に見たのですが、夜の海に波がライトアップされてとても綺麗だったことを思い出しました。そこで、イベント開催者の方に費用などを問い合わせて、提案に組み込みました。

最終的には提案の採用には至りませんでしたが、この課題では90点以上の良い成績を修めることができました。
―インターンを通じた乃木さんの成長を感じます!

オーストラリアから海外に就職しても良いのでは?シンガポールの求人で内定へ

―就職活動について教えてください
実は、日本では就職活動はしていません。オーストラリアで海外の就職先を探しました。

最初はオーストラリアの企業に応募しましたが、ビザの関係でなかなか思うような就職活動ができませんでした。

正規留学をすると2年間の卒業ビザは取得できますが、希望していたマーケティングやビジネス領域は3年契約の募集が多く、難しかった部分があります。

ただ、そこで浮かんだのは「海外に就職する」というアイディア。日本からオーストラリアに留学したのだから、オーストラリアから他の国に就職しても良いのでは?と考えました。

そして、グローバル求人サイトや外国人向けの海外エージェントなどを利用して、中国やシンガポールなどの成長国の就職先を探すことに。

するとGlassdoorで見つけたのが、今の会社のシンガポール法人が募集していた、日英バイリンガルのビジネスディベロッパーの求人。応募するとすぐに返事が来て、オファーをいただくことができました。

12月にディーキン大学を卒業後、翌月から2週間、研修でシンガポールに滞在しました。面接は全てオンラインだったので、この時に初めて現地を訪れました。研修は本当に楽しかったです!

その後、本来は日本とシンガポールを行き来する予定でしたが、研修を終えて日本に帰国したタイミングで、新型コロナウイルス感染が拡大しまいました…
―当初の予定よりも、チームと直接コミュニケーションをとる機会が減ってしまったと思います。やりにくさは感じますか?
思うように成果が出ない時は、物理的に距離があったり、日本語で相談できなかったりして大変だと感じることもあります。ただ、チームには優秀な方がたくさんいるので心強いです。

入社当初からマネージャーに繰り返しフィードバックをいただく中で、営業スタイルも学びました。

僕自身、最初はサービスを売ることだけを考えていました。ところが、営業先の情報を報告すると、マネージャーは「サービス販売以外にこんなことができるのでは?」とフィードバックしてくれます。

これによって、サービスを導入していただくだけではなく、例えば他の企業にサービスを紹介していただくなど、企業ごとに異なる関わり方でビジネスを成長に繋げられると思うようになりました。

今は、アポイントの前に訪問先のリサーチをしながら「この企業には、こんな関わり方をしていただくのが良いのでは?」と考えて日々営業をしています。単純に販売だけを追求するよりも面白いと感じますね。
―素晴らしいマネージャーさんですね!やりがいを感じるのはどんな時ですか?
自分の成長を感じられる時でしょうか。

例えば、英語で滞りなく営業のクロージングまでできたり、シミュレーション通りに商談を進められたりすると、知識や経験を積めていると感じます。

もちろん数字目標はありますが、そうした結果は、自分以外の外部要因が影響することもあります。

一方で、成長は、与えられた環境の中で自分のあり方を考えるものではないでしょうか。その時に自分が何をするべきかが分かった瞬間「成長したな」と感じます。もちろん、まだまだ成長しなければいけないことはたくさんありますが…!

自分が一歩を踏み出せば、受け入れてもらえる


―留学の経験が活きていると感じることは?
スキルの面では、英語はもちろん、ビジネスの知識や考え方においても、学んだことが今のキャリアの役に立っていると思います。

留学中のインターンを通して、自分が「できない」と最初に気付けたことは、勉強意欲にも繋がったので良かったです。

マインドの面では、チャレンジ精神です。

例えば、僕は留学当初友達がいませんでしたが、ディーキン大学のキャンパス内でフットサルをしている人たちに「参加しても良い?」と一言話しかけたことをきっかけに、輪が広がりました。

声をかける瞬間は緊張しましたが「入りなよ!」と言ってもらい、その後は、授業が終わるとほぼ毎日フットサルに参加するように。 走ることでストレス発散になりましたし、仲間と一緒に旅行したことも良い思い出です。

こんな風に、自分が一歩を踏み出せば、意外と受け入れてもらえることを感じました。

留学とは、自分の夢に向かうファーストステップ


―乃木さんにとって留学とは?
自分の夢や、やりたいことへのファーストステップです。留学という機会がなければ、サッカークラブの経営という夢は明確に浮かばなかったですし、今の仕事にも繋がりませんでした。だから留学が一歩目だと思っています。
―これからのステップアップが楽しみです!
ありがとうございます。まずは今の仕事の中で、できるだけビジネス経験を積みたいです。マネジメントのように組織を考えることにも興味があります。

その他にも海外就職や大学院進学など、色々な可能性も視野に入れながら、これからも頑張っていきたいです!

取材後記

新卒とは思えないほど濃密な経験を積んでいる乃木さん。国際的なビジネスマンとして、順調にキャリアを歩み始めています。
…ただし、留学中のアルバイト先はチーズケーキ屋さんだったとのこと。今のお仕事とのギャップが可愛くて、ほっこりしました!

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